ゆい農園 油井敬史さん
これまで渋谷のバーテンで働いたり、仙台で洋服屋さんをやったり
そう言われると確かにいそう!といういでたち。
でも畑にいるんですねえ
しかも自然栽培でやっていたり、渋谷のビルの屋上に畑をつくったり。
9月に発売されたばかりの「渋谷の農家」という本に、そんな油井さんが度々登場します。
その辺りも聞いてみました。
(取材は8月でした)
—猿が出て大変みたいですね
油井:大量に出ました。猿はキツイっすね。あいつら頭がいいし。犬を連れて畑に来たりし
ているけど、足も捻挫しちゃうし散々。
時間も資金もなくて、今回ばかりは助けを求めたら、たくさんの人が氣にかけてくれて、手伝
いにきてくれたり資材を提供してくれたり、トマトを買ってくれたり売ってくれたり。本当
にいろんな人に支えられているのを実感できました。
—Facebookにたくさんの人が励ましの言葉をかけてくれたり、心配してくれたりしていましたよね。
油井:こんなめんどくせー奴なのに(笑)今回も本当に有り難かったっす。
—農家になる前はどんなお仕事をしていたんですか?
油井:渋谷でバーテンやってました。自分でやりたくてやっていた訳じゃなくて(笑)流れ
でやることになって。そのあとも仙台で洋服屋をやってたんっすけど、どちらもやらされてる
感がありましたね。でもバーテンもいい経験だったし、無駄になっていることはないです。
—そこから農家になるってだいぶ飛んでる氣がします(笑)
油井:藤野に惹かれて、とりあえず東京から引っ越したんっすけど、仕事は決まってなくて。
いよいよ働かないとってことになって、有機農業の農業生産法人の募集を見つけたんです。興
味半分で見学に行って。そこで美味い野菜を食べた時に、自分でも作ってみたいって思ったん
です。元々宮城の実家で米と野菜は作っていたり、親戚は養豚場をやっていたりで、身近にそ
ういうもんがあったんです。
—農家になってどれくらいですか?
油井:就農3年目です。
—無農薬無施肥なんですね。
油井: 農薬は気持ち悪いから使ってないですね。肥料は、以前動物の糞を扱っていたら、ア
ンモニアで具合悪くなったんすよ。それからは勉強して、肥料も使ってません。作物は肥料な
くても育つものですしね。
—いわゆる自然栽培っていう形ですよね?
油井:こだわりを持って自然栽培に挑戦しているわけではなくて、やってきた結果がこうだっ
ただけ。それしかなかったんすよ。マルチはゴミになるから嫌いなだけだし。たいがい受け身
っすね(笑)
—weekend farmersを仲間と立ち上げて、色々な人を巻き込んでいますよね。
油井: 渋谷のど真ん中のビルの屋上に畑を作ったり、都内から自分の畑を見てもらうツアー
をしたり。渋谷に畑にトウモロコシを植えたので、それの収穫とあわせてトウモロコシ祭りを
したり、みんなでペットボトルで稲を育ててそれを収穫したり。簡単な野菜の育て方を覚え
てもらって、誰でも自宅で好きな野菜くらいつくれるようになるといいなって思ってます。
—そのWeekend farmersの仲間の小倉さんが「渋谷の農家」を出版しました。いいことばか
りではなく、農家のリアルを赤裸々に描いていて、油井さんの見るなら見ろという侍のような
潔さがすごいなと思ったんですが(笑)
油井:もうちょっとカッコよく描いてくれてもよかったですよね(笑)隠すことでもない
し、あれが農家のリアルっす。
妻があの本を読んで、俺がどんなことをしているか初めて知った!って言ってました(笑)
—渋谷の農家の本の中で、「僕は当たり前に美味いって思ってもらえる野菜を育てて、それを
今のスーパーで売ってるのと同じくらいの当たり前の値段で売りたいんです。」っていうのが
印象的でした。
油井:美味しくない有機野菜に高い値段だして買うのも馬鹿らしいじゃないっすか。あと買
い叩かれるのも面白くねーなって。反骨精神ってやつ。
—ゆい農園の野菜は都内のレストランからかなり注文が入っているって聞いています。
油井:常識と言われるものとは違った切り口で 頭使わないといいものできないっすよね。
量ができるのと食えるってのは別だと思っていて。弱小農家もクオリティ上げれば、都会が近
いから食っていけると思ってます。とはいえ俺なんかもまだまだっす(笑)
—本の反響はありますか?
油井:知らない人から「読んだよ」って言ってもらったり、あーだこーだ言ってらもってる
んだなってのは感じます。
こないだ新聞に養老孟司さんが書評を書いてくれていて、それにはさすがに驚きましたね
(笑)でも本当は目立ちたくないんで、コソコソやりたいんすよ(笑)
—農家をこれからも続けていきたいですか?
油井:地域の人に喜んでもらえたりするの、今まで経験ないんっすよ。周りに人がいる安心
感があって。こっちで続けていきたいっすね。
油井さんの口から出る言葉は、いつもびっくりするほど真っ当でぶれない。オブラートの存
在を知らないんじゃないかと思うくらいのストレートさは、そのブレなさ加減でとても油井
さんらしい、油井さんのとてもステキなところになっている。
当たり前に美味しいって思ってもらえる野菜を育てて、当たり前の値段で売りたいという油井
さん。無農薬無施肥でやっている彼がそれを実現することがどれほど大変か、どれくらい手
がかかることなのか、「渋谷の農家」を読んでいただくととてもよくわかります。彼らのやっ
ていることがどんなにワクワクしてステキなことかも。
まるまるマルシェでも本を販売しますよー!
(撮影:三谷 浩)
【ゆい農園データ】油井敬史さん
生産地:相模原市緑区若柳
規模: 6反
栽培方法: 無農薬、無施肥
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