シンプル・ベジ 久保正英さん
世の中的に「春菊」というと、鍋の時にしか登場しなかったり
すき焼きに入っていても、子どもは全く手をつけなかったり。
そんな超脇役春菊のことが大好き過ぎて、農家になったのがシンプル・ベジの久保さん。
これまでに取材した農家さんから「久保さんの畑を一度見てみたい。」という声を何度か聞
いていて、畑に行くのがとっても楽しみでした。
—久保さんの畑は野菜が見えないくらい草がたくさんですが、これはわざとそうしているんですか?
久保:自然栽培ね。基本固定種、在来種。直蒔きで種採りもしてるよ。肥料も何も入れてない。種を直接蒔いて、草に勝ちきったらそのままにしてる。草生栽培で雑草を使いたいねん。合う雑草を増やす努力はしてるかな。
—虫とか大変じゃないですか?
久保:この時期は草取りばっかり。春菊が発芽したての頃ってコオロギがやってくるんやけど、殺すと何故かすごく来るの(笑)だから1匹1匹手で採ってる。
—あちら側にとうもろこしがたくさん密集していますね。
久保: とうもろこしは400本くらいかな。4年目だけど段々よくなってる。このとうもろこしも在来種だよ。とうもろこしの祖先みたいなやつ。防風林としての役割もあるの。
—どうして固定種、在来種でやっているんですか?
久保:みんなと一緒だと、春菊以外はまだ自信がないの。違いを出したくて。あと自然栽培の勉強をさせてもらった奇跡のリンゴの木村秋則先生が、農家は種が採れて一人前って言っていて、それを体現したいと思って。
—そもそもどうして農家になろうと思ったんですか?
久保: 昔お菓子メーカーに勤めていて、ポテトの商品のチーフをしていたの。取り扱ってい
たのがジャガイモだったから、農産品への興味はあった。で、必ず農薬使ってるのよ。農薬ま
かなくてもいいのにとずっと思っていて。春菊は元々大好きで、色々なものを食べていたけれ
ど、どれもイマイチ納得できなかったの。それじゃあ自分で作ろうって(笑)
—どこかで研修はしたんですか?
久保: 石川県のJAはくいにこっちから2年通ったね。我流はいつまでたっても我流だから。
通ってよかったよ。
—シンプル・ベジといったら春菊ですよね?
久保:僕の春菊は茎も柔らかくて甘いって言ってもらってる。普通の春菊は真っ直ぐ生える
んやけど、ここのは柔らかいから稲穂みたいにしなるの。春菊の本当の形を目指したら美味
しくなったな。
—どうしたら久保さんの春菊が食べられますか?
久保:春菊は飲食店にも卸しているし、個人で3kg頼んでくれる人もいるよ。色々なマルシェ
にも出店してる。援農はあるけど、基本一人でやってるからイベントは大変だけどね。必死
だから(笑)
—(有)ふじのさんとのコラボで柚子果汁も開発されましたね。
久保: 春菊が好きだから色々な食べ方をしてきて、初めて自分のとこの春菊食べる人には
「サラダで食え」って言ってるんやけど、元々春菊は鍋っていう習慣があるから、春菊のし
ゃぶしゃぶで食べて欲しいねん。しゃぶしゃぶしてこの柚子果汁と塩で激ウマだよ。
—シンプル・ベジさんは全国にファンがいますよね。
久保:札幌から鹿児島まで100世帯くらいに宅配してる。5年前の自然栽培農作物の品評会で
最優秀賞である木村賞を取って、経験と勘に理屈がついた感じかな。さっき言ってた奇跡のリ
ンゴの木村先生ね。たまにこの畑も見にくるよ。色々注文つけるけど、今年は何も言わなか
った。想定通りの味になったからね。だから今年は仕掛けてるの。
—将来の展望を教えてください!
久保: 無農薬春菊の最大大手になりたい。去年は1tだったけど、今年6t目指してるのよ。藤
野は霜が降りるから、出荷も種を繋ぐ過程もヒヤヒヤ。冬は岡山から出荷しようと思って、こ
のあいだ種蒔きしてきたよ。今2.5t出荷して、3.5tは播種中。必死だからね(笑)
農業経営塾を開催したり、全国に飛び回って講演会をしたり。
でも「これはトマトの祖先ね。」「見えないけどよく見るとここにナスがあんねん。」と、
教えてもらわなければ、一面草むらにしか見えない畑を案内してもらうと、無秩序に生えて
いるようで、いや、確かに無秩序なんだけど、本当の姿でしかない野菜たちに感動したし、こ
ういう畑は、本当に野菜づくりが楽しくて、野菜を愛していないと(というと薄っぺらくなっ
ちゃいますが)できないだろうなと思ったのでした。
本当にあの畑をみると、商売とか売上とか、そういうのを超えたものが形になっていて、それ
は久保さんの人間性の成せる技だなと思うのです。
そんな久保さんの育てた春菊や野菜たちをまるまるマルシェで是非!
(撮影:三谷 浩)
【シンプル・ベジデータ】久保正英さん
生産地:相模原市緑区佐野川(他6件)
規模: 1.3ha
栽培方法: 無農薬、自然栽培
出店情報: Facebookをチェックしてね!
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